ここまで24回にわたって説明してきたのは、世界の音楽のうちのひとつの体系です。それを「音楽理論」と言い切ってしまうのは正確ではありません。この回でそのことをはっきりさせます。
第1回で「この連載が扱うのは西洋由来の理論です」と書きました。連載の終わりに、その外側に何があるのかを見ておきます。知らないまま「これが音楽理論だ」と思い込むと、音楽の見方が狭くなります。
12個に等分するのは決まりではない
この連載の前提は、1オクターブを12個に等分すること(十二平均律)と、長調・短調を軸にすることでした。これは物理法則ではなく、西洋で選ばれ、録音産業とともに世界へ広まった約束です。他の地域では別の分け方が使われています。
- マカーム(アラブ音楽)— 12等分では表せない音程を使う。旋法ごとに固有の進み方がある
- ラーガ(インド古典音楽)— 上がるときと下がるときで使う音が違う。時間帯や情感と結びつく
- ペロッグ・スレンドロ(インドネシアのガムラン)— 5音・7音の音階だが西洋の音階とは間隔が違う
- 日本の音階(都節・律・民謡音階)— 半音の位置が西洋の長短調と異なる
- ブルーノート(ブルース)— 西洋の記譜では表しきれない微妙な高さが本質にある
共通しているものもある
体系は違っても、共通する要素はあります。たとえば5音の音階(ペンタトニック)は、西洋・東アジア・アフリカ・アンデスなど世界中に独立して現れます。下の鍵盤で鳴らしてみてください。どこかで聞いた響きに感じるはずです。
この響きが世界的に見られるのは、単純な周波数の比で作れて、どの音を重ねてもぶつかりにくいからだと説明されています。ただし、なぜ人がこの響きを好むのかは完全に解明されていません。
1オクターブを12個の等しい間隔に分ける方法。この連載とChordMeloの前提ですが、世界で唯一の分け方ではありません。
ChordMelo でできないこと
ChordMelo は12個の音しか扱えないので、マカームやラーガの微妙な音程は出せません。ペンタトニックや日本の音階のように12個の中から選ぶ音階なら、コード進行の選び方でおおよそ再現できます。ギターモードはペンタトニック寄りの動きをするので、その雰囲気に近づけられます。
- 自分の地域や好きな音楽の体系を、その言葉で書かれた資料で調べてみてください
- 西洋和声を学んだあとに他の体系を見ると、前提の違いがはっきり見えて面白いです
- 「これが正しい音楽」という言い方に出会ったら、誰にとって正しいのかを考えてみてください
ペンタトニック寄りに動くギターモードで作ってみてください。西洋和声の枠内でも、違う響きに寄せられます。
ギターで作ってみる西洋和声は「音楽理論のひとつ」です。マカーム・ラーガ・ペロッグなど、別の原理に立つ体系が世界中にあります。